日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-39S
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肝臓の発生過程におけるmCyp1a2発現の定量的解析とZonation構造の形成時期の特定
*市川 眞子神藤 真貴子八木 美佑紀宮澤 未来武藤 広将落合 和
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抄録

妊娠中の喘息発作は、母体が血液中に酸素を十分に取り込めないことから、胎児への酸素の供給不足を引き起こすことになる。したがって、妊娠中であっても、喘息の発作を回避するためにテオフィリンなどの薬物治療が必要となる。テオフィリンは、母体の肝臓では、CYP1A2によって代謝される。一方で、母体から胎児期へと移行したテオフィリンがその肝臓で代謝されるかは、CYP1A2の発現の程度に依存するが、そのような情報はない。

また、成体の肝臓において、CYP1A2は薬物や異物を効率的に代謝するために、zonation構造を形成している。本研究では、妊娠マウスを用いて、胎児および新生児から成体までの肝臓の発生過程におけるmCyp1a2のmRNAおよびタンパク質の発現量を定量的に解析した。さらに、mCyp1a2のzonation構造の形成時期を特定するために、胎児から新生児の肝臓での解析を行なった。我々は、胎児期の肝臓では、mCyp1a2オスとメスともにほとんど発現していないことを明らかにした。また、mCyp1a2のタンパク質発現量は、生まれて1週間後では、オスとメスで、それぞれ成体の発現量の24%と14%であった。さらに、mCyp1a2の発現量は雌雄ともに生後、28日以降では、ほぼ成体と同程度になっていた。加えて、mCyp1a2のzonation構造は、生まれてから、5日後から徐々に形成され始めることも明らかにした。本研究から、胎児期の肝臓ではmCyp1a2の発現量が低く、生後までzonation構造が形成されないため、薬物代謝能が低いことが推察された。

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© 2022 日本毒性学会
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