主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
【背景及び目的】
肥満2型糖尿病モデル動物であるSDT fatty rat(SDTfラット)は雌雄共に腎病態を呈し、雄でより顕著であることが報告されている。しかし、食餌条件により生じる病態の雌雄差については未だ解明されていない。本研究では、SDTfラットに高ショ糖/高脂肪食(Quick Fat: QF)を給餌し腎臓への影響とその雌雄差を解析した。
【材料と方法】
4週齢の雌雄SDT fラットに標準食CE-2及びQF(いずれも日本クレア(株))を自由摂取させた。飼育中に動物が死亡したため、飼育期間はそれぞれ雄27週齢、雌38週齢までとし、体重・摂餌量・血糖値を測定した。飼育期間終了後に剖検及び臓器重量測定を行い、血液並びに腎臓を採取し、血液生化学的検査、腎臓の病理組織学的観察及び遺伝子発現解析を実施した。
【結果】
QF食給餌の雌雄SDTfラットのみで死亡例が認められた。死亡動物では、いずれも顕著な腎病変が認められた。特に雄では、糸球体の大型化、メサンギウム増生、尿細管の再生・拡張、尿円柱形成、Armanni-Ebstein病変、間質の炎症生細胞浸潤が認められた。生存例を含め、上記の病変はQF食で増悪傾向を示した。雌SDTfラットでは、雄と同様の病態が認められたが、雄と比較し、糸球体におけるメサンギウム増生、マクロファージ浸潤、線維化はより増強傾向を示し、逆に、尿細管の各病変は減弱する傾向が見られた。
【考察】
QF食給餌により雄SDTfラットでは尿細管病変が、雌SDTfラットでは糸球体病変がより増悪し、食餌により病態の特徴が異なることが示された。このことから、QF給餌は、雌雄SDT fattyラットの腎病態を悪化させるとともに、雌では糸球体、雄では尿細管の病変についての解析に適する新たな糖尿病性腎臓病(DKD)モデルとしての有用性が示された。