日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-57S
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発達神経毒性評価の効率化に向けた脳神経分化トレーサーマウスの有用性検証
*辰巳 佳乃子石田 慶士南川 祥輝森 一馬松丸 大輔永瀬 久光諫田 泰成田熊 一敞中西 剛
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抄録

【背景】近年、神経発達症患者の増加が社会問題となっており、その原因の一つとして化学物質による発達神経毒性(DNT)が懸念されている。そのリスク評価にはin vivo DNT試験が確定試験としてガイドライン化されているが、煩雑なためより効率的な評価系の開発が必要である。本研究では、神経分化状態を非侵襲的に評価することが期待されるトレーサーマウスを作製し、その表現型解析およびDNT評価における有用性をDNT陽性対照物質であるバルプロ酸ナトリウム(VPA)を用いて検討した。

【方法】神経分化マーカーのプロモーター制御下にルシフェラーゼ(Luc)を発現するトランスジェニック(Tg)マウスを作製し・ライン化した。Luc活性の測定は、in vivoイメージング解析に加え、当該組織を摘出したin vitro解析を行った。VPAの投与は妊娠12.5日の母動物に500 mg/kgをip投与した。脳の組織学的解析はニッスル染色により行った。

【結果】Tgマウスの脳のLuc活性は出生直後にピークを迎え、日齢が進むとともに低下し、離乳期以降は低いレベルでほぼ定常状態となったことから、この発現変動は脳神経細胞の分化状態を反映していると考えられた。次に自閉スペクトラム症様症状が誘導される条件でVPAを投与し、児動物の脳についてin vivoイメージング解析を行ったところ、出生4日後から離乳期に掛けて、発光の有意な低下が認められた。また成熟期の脳においても、VPA投与群では前頭前皮質における神経細胞数およびLuc活性が共に有意に低下していた。

【結論】本トレーサーマウスのLuc発現は、脳神経細胞の分化状態を反映していることが確認されたことから、本トレーサーマウスのin vivoイメージングにより、DNTによる発達期脳への影響を非侵襲的に捕らえることができる可能性が示された。

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