日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-5S
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カドミウムによる絨毛外性栄養膜細胞HTR-8/SVneoの遊走阻害
*小串 祥子中西 剛木村 朋紀
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抄録

【目的】Cdは環境中に広く分布し、生体への悪影響を引き起こす有害金属である。エコチル調査では血中Cd濃度と早期早産に関連性が見出されており、早期早産の原因の一つである妊娠高血圧症候群(HDP)において、動物実験レベルでCdがHDPを引き起こすことから、微量CdによるHDP発症がその原因であると思われる。我々は、HDPが胎盤形成不全による胎盤虚血により引き起こされることに着目し、Cd曝露による胎盤幹細胞分化への影響について検討してきた。妊娠初期において、細胞性栄養膜細胞が絨毛外性栄養膜細胞(EVT)や合胞体性栄養膜細胞に分化し、EVTが母体子宮内に浸潤してらせん動脈を再構築することで、胎盤が形成される。これまでの研究結果より、低濃度CdはEVTへの分化を特に阻害することが明らかとなったが、本研究では、CdがEVTの機能にも影響を及ぼすのか検討した。

【方法】HTR-8/SVneoはAmerican Type Culture Collection(ATCC)から入手し、細胞遊走能評価は創傷治癒アッセイ(スクラッチアッセイ)で行った。8日間Cd処理した細胞を播種し、その1日後にチップの先端で細胞を掻き取り、無血清培地に交換した。スクラッチ24~48時間後の様子を観察し、傷の埋まり具合をスクラッチ直後と比較してCdによる影響を評価した。

【結果・考察】1 µM程度の高濃度CdがHTR-8/SVneoの遊走を阻害することは知られていたが、スクラッチを行う8日前からCdを処理すると、100~400 nM処理群でも創傷治癒の阻害が見られた。この結果は、CdはEVTへの分化阻害に加えてEVTの機能障害を起こすことで胎盤形成不全を引き起こし、HDP発症を誘発していることを示唆している。現在、EVT機能に関わる遺伝子の発現量変化についても解析し、Cdの作用点解明を目指している。

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