日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: P-6S
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メチル水銀によるセレン代謝撹乱機構と超硫黄によるターンオーバー
*工藤 琉那水野 彩子外山 喬士斎藤 芳郎
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抄録

【背景・目的】最近我々は、セレノシステイン (Sec) 選択的修飾検出法であるaBPML法を独自に開発し、メチル水銀が血漿中のセレン輸送体であるセレノプロテインP (SeP) 中のSecと非常に安定な共有結合を形成する (Se-水銀化) ことで、セレンの生体利用を阻害することを明らかにした。しかし、Se-水銀化によるセレン輸送阻害機構の詳細や、Se-水銀化の解除機構は不明であり、上記の解明を目指した。

【結果・考察】血漿中・培地中のSePは、受容体ApoER2を介して取り込まれ、リソソームでSecまで分解される。その後、細胞質に輸送されたSecはセレノシステインリアーゼ (Scly) によって無機セレンが取り出され、セレン含有タンパク質 (GPxなど) の生合成に用いられる。そこでまず、ApoER2を異所性発現させたHEK293細胞、及び内在的にApoER2を発現するヒト神経芽腫に精製SePを添加することでその取り込みを検討したところ、Se-水銀化の影響は認められなかった。また、リソソーム阻害剤であるバフィロマイシンA1での検討から、Se-水銀化SePの分解速度もコントロールのSePと同等であることが判明した。興味深いことに、リコンビナントSclyを調製し、Se-水銀化したSecを基質としてその酵素活性を測定した結果、活性が認められなかったことから、SePのSe-水銀化は、Sclyの基質認識阻害によりセレン代謝を撹乱することが明らかとなった。生体内では、反応性が高い硫黄代謝物 “超硫黄” が合成されており、最近その生理作用が注目されている。我々の解析から超硫黄ドナーは、グルタチオンで解除できなかったSe-水銀化を解除し、Se-水銀化で低下したSePのセレン運搬作用を回復させたことから、Se-水銀化は内在性の超硫黄によるサポートのもと、最終的に緩やかに解除されると考えられる。

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