日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S10-3
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シンポジウム10
THP-1細胞の活性化を指標にしたナノマテリアル(NM)の in vitro 免疫毒性試験法の開発
*足利 太可雄
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抄録

多様なNMの毒性を効率的かつ高精度で評価できる試験法の開発および国際標準化は喫緊の課題であり、それを可能にするin vitro試験法が求められている。そこで本研究では、異物認識の根幹を担う抗原提示細胞に各種がNM与える影響に着目し、毒性メカニズムの解明と試験法の開発を行うことを目的とした。方法としては、抗原提示細胞の活性化を指標とする皮膚感作性OECDテストガイドラインであるh-CLATを用いて各種NMの評価を行った。ナノシリカについては、今回検討した5種全てh-CLAT陽性となり、一部はCD54の発現をコントロールに比べ20倍以上に亢進させた。銀ナノ粒子については、アレルゲンである銀イオン同様、THP-1細胞のCD86およびCD54発現を亢進したが、培地中への銀ナノ粒子から銀イオンの溶出が認められたことから、銀ナノ粒子によるTHP-1細胞の活性化は溶出した銀イオンによるものと考えられた。また酸化チタンNMについては、一部についてCD54発現の弱い亢進がみられた。さらにカーボンナノチューブについては、低濃度においてCD54発現の強い亢進が見られた。以上より、NMの免疫毒性評価のスクリーニング試験としてのh-CLAT試験の有用性が示唆された。

 今後、インフラマソーム解析などによりNMによるTHP-1細胞の活性化のメカニズムを明らかにするとともに、NMのin vivo吸入曝露による肺胞マクロファージへの影響を解析することで、in vivoにおける毒性発現とin vitroにおけるTHP-1細胞活性化との関係性を明らかにする予定である。さらに多変量解析により、in vivo, in vitroそれぞれの試験結果と物性の関係を明らかにする。以上より、抗原提示細胞であるTHP-1細胞の活性化を指標にしたNMのin vitro免疫毒性試験法の開発を目指す。

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