日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-5
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シンポジウム14
ヒトシトクロームP450 3As発現ゼブラフィッシュにおけるサリドマイド奇形
*寺岡 宏樹Wenjing DONG久保田 結衣赤坂 洪暢縄司 奨関 雅範生城 真一小林 麻己人
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抄録

サリドマイドの鏡像異性体である左手型(L体,S体)は、ヒトなどの霊長類の他、通常の実験動物であるウサギでは短肢症を含む重篤な発生毒性を示すが、げっ歯類など他の実験動物では短肢症は認められない。そのため、ウサギを用いた催奇形性試験が一般的となっているがウサギは高価であるため代替法が検討されている。近年、ゼブラフィッシュがサリドマイド感受性を示すことが報告されて注目を集めたが、少なくとも通常の飼育水中に添加する暴露では影響がごく弱いとする報告もある。一方、薬の代謝産物が毒性を示すこと(代謝的活性化)が知られており、肢芽形成に対するヒトシトクロームP450 3As(hCYP3As)のサリドマイド代謝産物の毒性影響も報告されている。本研究では、βアクチンプロモーターにhCYP3A4、3A7、1A1のいずれかとEGFP配列を組み込んだトランスポゾンベクターをゼブラフィッシュゲノムに導入し、F0胚稚魚と、一部、トランスジェニックフィッシュを作成してサリドマイドの影響を検討した。無処置胚稚魚に200 µM サリドマイドを培養シャーレ内で暴露しても全く影響しなかったが、hCYP3A4、3A7が全身にモザイク状に発現したF0胚稚魚にサリドマイドを暴露すると、胸びれの欠損や短縮、耳石の異常、浮腫、眼の縮小などヒトで報告されているのと類似の影響が観察された。hCYP1A1発現胚稚魚では、hCYP1A1を介した代謝的活性化を誘発することが知られるベンツピレンを暴露すると、心臓周囲浮腫などの毒性が顕著に増強したが、サリドマイドでは影響がなかった。hCYP3A7-TGは全身にEGFP蛍光とhCYP3A7を発現した。hCYP3A7-TGはサリドマイド処置で胸ビレの低形成と心臓周囲浮腫を示した。サリドマイド毒性の発現にはhCYP3Asによる代謝が必要であることが示唆された。

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