主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
遺伝子改変キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、アデノ随伴ウイルスベクター、腫瘍溶解性ウイルスを始めとする再生医療等品(細胞加工製品・遺伝子治療用製品)の薬事承認が相次いでいる。アカデミア発の再生医療等製品の国内研究開発も活発化し、医療上の効果のみならず、大きな経済効果を生み出すことが期待されている。今後、日本発の再生医療等製品の臨床開発およびその事業化を推進するためには、再生医療等製品特有の安全性に関する課題を解決する必要がある。細胞加工製品やウイルスベクター製品はしばしば免疫毒性を引き起こす。そのため、齧歯類を用いた非臨床試験から得らえた毒性データは、免疫システムと抗原相同性の相違から、これらの製品の安全性評価として不十分であろう。
われわれはAMED事業の中で、再生医療等品の非臨床安全性の課題を解決するために、霊長類モデルを用いた非臨床安全性の評価法とそれを実施するための基盤施設の開発を行っている。まず、カニクイザルを用いたCAR-T細胞の非臨床安全性試験を2種類開発した(自家移植モデル, Morokawa et al. Clin Transl Immunology 2020); 異種移植モデル, Yagyu et al. Clin Transl Immunology 2021)。この試験は新規CAR-T細胞のヒト初回投与臨床試験のための予備毒性試験データとなった。次に、霊長類を用いた非臨床試験のための専用オープンラボとして、信州大学遺伝子・細胞治療研究開発センター「CARS」イナリサーチラボを2019年に開設した。そこではこれまでに8種類のカニクイザルを用いた非臨床試験が実施され、さらに2022年にはウイルスベクターを用いた非臨床試験に対応すべく、カルタヘナ法に準拠した整備が行われている。本学会では、われわれが開発してきた非臨床試験方法とオープンラボ「CARS」を紹介したい。