日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S2-2
会議情報

シンポジウム2
RORγt阻害剤の薬効と副作用リスク
*上山 あずみ井村 智尋房前 裕順佐々木 義一奥野 隆行山本 美奈福島 民雄
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

RORγt阻害剤は、Th17細胞やγδ T細胞などのIL-17産生細胞の分化と機能を抑制することから、IL-17を介する乾癬や自己免疫疾患の治療薬として期待されている。一方で、RORγtは胸腺内リンパ球形成の過程でアポトーシス制御にも働いており、RORγt ノックアウトマウスでは胸腺内T細胞の分化異常と細胞周期異常がみられ、胸腺リンパ腫を発症する。そこで本研究では、RORγt阻害剤がオンターゲット性の副作用リスクを回避して乾癬治療薬となり得るかどうかを検証した。まず、ドキシサイクリン誘導性RORγtノックダウンマウスを構築し、10週齢からドキシサイクリンを投与した結果、先天性RORγtノックアウトマウスと同様の胸腺内T細胞異常とリンパ腫発症が観察されたことから、後天的なRORγt阻害によっても副作用懸念があることが示された。次に、経口吸収性の高いRORγt阻害剤を用いて、全身投与による薬効と胸腺への影響を調べた。乾癬モデルマウスに2週間連投すると、乾癬病態が抑制されたが、それと同時に、胸腺内T細胞において抗アポトーシス分子の発現低下と分化異常が観察された。一方、我々が創製したRORγt阻害剤S18-000003は、2週間の外用投与によって強力な乾癬病態の抑制を示し、胸腺内T細胞への影響はほとんど認められなかった。高い皮膚滞留性/低い血中移行性を有するRORγt阻害剤を開発することにより、副作用リスクの低い乾癬治療薬 (外用剤) を実現できる可能性を示した。

著者関連情報
© 2022 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top