日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-1
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シンポジウム22
適切な動物実験を目指して
*浦野 徹
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抄録

動物実験の必要性を示す指標のひとつがノーベル賞・生理学医学賞で、1901〜2017年での生理学医学賞の70%は動物実験の成果に対して授与されている。この指標にも見られるように、実験動物は人類が健康に生きていくために、生命現象の解明や医療技術の開発等の動物実験の場に貢献してもらうなどして、ライフサイエンス研究を支えている。

適切な動物実験とは科学的であり、倫理的であることを意味する。前者の科学的とは、再現性を得るために、動物自身並びに環境をできるだけコントロールして動物実験を行う事である。後者の倫理的とは、科学上の利用の目的を達成することができる範囲において、できるだけ動物を供する方法に代わりうるものを利用するReplacement(代替法利用)、できる限り利用に供する動物の数を少なくするReduction(使用数削減)、できる限り動物に苦痛を与えない方法によって実施するRefinement(苦痛軽減)の3Rsである。そして倫理的基盤のひとつが、動物の愛護及び管理に関する法律等の各種規制である。これら規制の中の「実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準」(2013年環境省告示)の一般原則には、「動物を科学上の利用に供する事は、生命科学の進展、医療技術等の開発等のために必要不可欠」と示されている。また、2006年文部科学省が告示した「研究機関等における動物実験等の実施に関する基本指針」の前文には、「・・・動物実験等は必要な、やむを得ない手段である」と示されている。いずれの規制も動物実験等の必要性を謳っている事から、我々はこれらを踏まえて動物実験に臨んでいかなければならない。

今回の講演では、実験動物側の専門家からの目線で、再現性の高い正確な動物実験成績を得るための方法、実験動物と動物実験に関連した規制制定、適切な動物実験を目指しての主な取組み(周知活動、解説書作成、国際的な規制の動向調査、緊急時対応マニュアル、情報公開、国による実態把握外部検証、人材育成、日本実験動物学会の試み)についての概要を解説する。

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