日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-4
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シンポジウム23
COVID-19重症化予測因子としての肺傷害関連バイオマーカータンパク質の有用性
*荒川 憲昭斎藤 嘉朗
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抄録

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行はまだ続いている。COVID-19が重症化する患者の多くは急性呼吸促迫症候群(ARDS)を合併し、予後不良例が多い。したがって、COVID-19の進行を早期に予測するためのバイオマーカーの開発が求められている。本研究では、肺サーファクタントタンパク質-D (SP-D)、シアリル化糖鎖抗原KL-6、敗血症マーカープレセプシン(P-SEP)、新規間質性肺炎バイオマーカー候補であるカリスタチンおよびストラテフィン(SFN)の5種類の肺傷害関連バイオマーカーに関して、COVID-19の予後予測性能を比較検討した。

 COVID-19肺炎の軽症および中等症となり重症化しなかった患者(軽症および中等症例)と重症化した患者(酸素投与あるいは人工呼吸器を必要とする重症および重篤例)から入院中に経日的に採取された血清試料を用いて、これら5種のバイオマーカーの測定を行った。その結果、SFNとP-SEPは、COVID-19患者の重症化に伴い上昇し、症状の改善とともに低下することが分かった。両タンパク質の血中濃度の変化は、肺線維症のバイオマーカーとしても知られるSP-DやKL-6、あるいは経皮的動脈血酸素飽和度(SpO2)の変化よりも早く、患者が重症化する数日前から有意な高い値を示すことが明らかになった。これらの結果は、独立した別群の試料でも再現したことから、SFNとP-SEPはCOVID-19の重症化に対する予後バイオマーカーとして有用である可能性が示された。

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