日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-1
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シンポジウム3
ニューモダリティ医薬品の遺伝毒性評価
*三島 雅之
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抄録

1982年に世界で初めてのバイオ医薬品がFDAに承認されて以降、2000年のICH S6ガイドラインまで、我々は長い間バイオ医薬品の遺伝毒性試験を実施してきた。安衛法で要求する有害性評価からバイオ製品のAmes試験が除外されたのは2020年になってからである。1990年代にはバイオ医薬品のAmes試験や交差しないげっ歯類試験は無意味との意見があったが、なぜ企業はAmes試験を実施し続け、規制当局は要求し続けたのか。標準的な非臨床安全性試験パッケージから逸脱することを、皆が恐れたからである。現在では無用とされる試験を手厚く実施したが、致死的な毒性を発見できなかったTGN1412の悲劇が起きた。こうした歴史は、新モダリティへの対応は、過去の実績から離れる勇気を持ち、科学的に妥当と思われる方法で取り組むべきという教訓である。我々は、中分子ペプチド、遺伝子治療、核酸医薬品のような現在のニューモダリティの遺伝毒性評価をどう考えたらよいのだろうか。昨年、米国では開発中のAAVベクター遺伝子治療薬BMN307でマウスの最高用量群6/7例に腫瘍が発生して、FDAはクリニカルホールドを命じた。しかしながら、Ames試験で遺伝子治療の発がん兆候はとらえられそうにない。特定の部位にDNAが挿入されることが悪いので、ランダムに挿入される製剤なら問題ないとの考え方があるが、代表的な遺伝毒性発がん物質のほとんどはランダムに遺伝子変異を起こす。ここでは、中分子ペプチドと遺伝子・核酸医薬を中心に、ニューモダリティの遺伝毒性について、何を気にかける必要があるのか、それをどうやって見にいくのか、科学の視点で考える。

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