日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S3-3
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シンポジウム3
集学的アプローチによる化学物質の遺伝毒性評価の現状と将来展望
*戸塚 ゆ加里
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抄録

医薬品などの化学物質開発の際に、遺伝毒性の評価は必要不可欠である。現在汎用されているin vitro, in vivo遺伝毒性試験は、いずれも標的遺伝子の変異に伴う表現型を指標としているが、こういった手法では結果にバイアスがかかることが以前から懸念されてきた。一方、ノンバイアスな手法として、次世代シークエンサーを用いた変異解析が注目されている。特に、次世代シークエンサーにより得られた各々の変異スペクトルの内訳を、変異箇所の前後を含んだ周辺配列により分類したものを変異シグネチャーと呼び、環境暴露を反映することが知られている。さらに、変異シグネチャーにおいて、転写鎖側と非転写鎖側で変異頻度が異なる現象が観察される場合があり、これをストランドバイアスと呼ぶ。この現象は転写共役修復機構により起こるとされており、当該箇所の変異導入にはDNA付加体が寄与していると考えられている。つまり、これらのDNA付加体は、変異誘発に重要なDNA付加体、すなわち「ドライバー付加体」と考えられる。したがって、変異シグネチャーに関連するドライバーアダクトをスクリーニングして同定することで、化学物質が誘発する遺伝毒性のAdverse Outcome Pathwayを得ることも可能となり、より精度の高い遺伝毒性評価が可能になることが期待される。本シンポジウムでは、次世代シークエンサーによるゲノム解析やDNA付加物の網羅的解析などの集学的なアプローチを用いた研究について紹介し、これら手法を化学物質の遺伝毒性評価に応用する展望について述べる予定である。

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