主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
リードアクロスは、動物実験代替法の一種であり、化学構造等が類似する物質をグループ化し、未試験の化学物質の有害性をそのグループ内の物質(類似物質)の試験データから推定する手法である。リードアクロスにより信頼性の高い評価を行うためには、化学物質をグループ化する際の科学的な根拠が重要となる。グループ化の科学的根拠となり得る様々な要素については、OECDのガイダンスにまとめられている。特に、毒性発現のメカニズムに基づいたグループ化を行うことが重要とされており、その方法の一つとして毒性発現の要因となる部分構造に基づいたグループ化が推奨されている。本発表では、まず、OECDガイダンスに基づきリードアクロスの基礎についてまとめる。また、リードアクロスの評価支援システムとして無料で公開されているOECDのQSAR Toolboxや当機構のHESSについて紹介する。
リードアクロスは、評価の透明性が高く、様々な観点から慎重に評価できるという、規制利用に適した利点を持つことから、欧州化学品規制(REACH)、米国有害物質規制法(TSCA)や我が国の化学物質審査規制法など、各国の化学品規制において広く利用されている。本発表では、これら各国の規制利用におけるリードアクロスの利用方法や利用範囲などについて比較検討した結果を報告する。
OECDでは、動物実験代替法の規制利用拡大に関する取組の一環として、各国の動物実験代替法の規制利用に関するケーススタディーを開発している。これらのケーススタディーは、評価手法の改善や他国での利用可能性等に関する議論に活用されている。現在公開されているケーススタディーの中で使用されている動物実験代替法の手法としては、リードアクロスが最も多い。本発表では、これらリードアクロスに関するいくつかのケーススタディーの論点を紹介する。