主催: 日本毒性学会
会議名: 第49回日本毒性学会学術年会
開催日: 2022/06/30 - 2022/07/02
発達早期の環境要因は、雄性生殖器系に健康影響を引き起こすことが知られている。エストロゲンやアンドロゲンを含む性ホルモンの投与や内分泌かく乱物質を始めとする化学物質への曝露は児の雄性生殖器系の正常な発達に必要な各種ホルモンの血中レベルを変動させ、結果として精巣や精子形成に影響を生じるとされる。ここで、近年我々は、雄性生殖器系に健康影響を引き起こす発達早期の環境要因として、ストレスホルモンに着目している。そこで、新生児期マウスに対する、①「コルチコステロンの投与モデル」と、②「母児の分離によるコルチコステロン分泌誘導モデル」を用いて、発達早期に生じるストレスホルモンが雄性生殖器系におよぼす影響の評価を行った。モデル①ではICRマウスについて、生後1日目から10日目の間、セサミオイルに溶解したコルチコステロンを0.36、3.6、36 mg/kg body weight /day で皮下注射により投与した。モデル②ではICRマウスについて生後1日目から10日目の間、一日当たり0.5時間、1時間、2時間の母児の分離を行った。二つのモデル実験のマウスに共通して、生後10日目の時点で血中テストステロン濃度が有意に減少しており、同時にセルトリ細胞増殖停止マーカーであるp27を発現しているセルトリ細胞数が有意に増加していること、その後、生後16日目にはセルトリ細胞数が有意に減少していることが示された。さらに生後70日目で、精巣重量や成熟精子数の減少、セルトリ細胞数の減少、精巣内精細管の縮小を含む組織学的変化が認められた。両モデルから、発達早期に児が受けるストレスおよびそれによって生じるストレスホルモンは、雄性生殖器系に健康影響をおよぼす因子となることが明らかになった。加えて現在我々は、発達早期にストレスを受けた児の、さらに次の世代の個体について影響の評価を開始している。