日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S44-3
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シンポジウム44
抗体医薬品の免疫原性
*三島 雅之
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抄録

抗バイオ医薬品抗体はアナフィラキシーなどの重篤な毒性を引き起こす可能性があるのでバイオ医薬品の免疫原性は重大な問題である、との記載を論文のイントロダクションでたびたび目にするが、ヒト化した抗体医薬品がアナフィラキシーを起こすことはほとんどない。抗体医薬品ではアナフィラキシーよりも、抗医薬品抗体の免疫複合体が引き起こす血管炎や、原薬の血中濃度低下、抗医薬品抗体の中和作用などによる薬効低下のほうが現実的な問題である。抗体医薬品の免疫原性をどう予測するのか。ICH S6(R2)ガイドラインが言う「適切な動物種」を用いても、予測することができない。人以外の動物では免疫がヒト型抗体を異物と認識して反応するので、適切な動物種であっても免疫原性に関してはヒトへの外挿性が得られない。近年はヒトIgGを改変して、薬効や安全性により優れた抗体医薬品を作成しようとする試みも多い。ヒトタンパク質のアミノ酸配列を改変した場合、それが免疫原性にどのような影響を及ぼすか、非臨床で調べておきたい。ヒト免疫細胞を用いてin vitroでT細胞の活性化を観察したり、HLA上のペプチド断片を分析する方法などが知られており、実際にそうした試験系から得た情報により、長期投与しても抗医薬品抗体産生がごく低い抗体医薬品の開発に成功した例もある。その一方で、ヒトIgGであっても、ヒトで高率に抗医薬品抗体を誘導するものがある。アミノ酸配列以外に、抗体医薬品の免疫原性に大きな影響を及ぼす因子があることは間違いない。免疫原性に、製剤中不純物が影響していることはほぼ確実だろう。ここでは、抗体医薬品の免疫原性を知るための方法をレビューし、現在の方法では見落としている可能性がある不純物がどう免疫原性に影響し、我々はそれにどう対応していくべきかを考える。

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