日本毒性学会学術年会
第49回日本毒性学会学術年会
セッションID: S7-4
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シンポジウム7
rasH2-Tgマウスがん原性試験における曝露比による高用量選択のための発がん感受性データ調査
*久田 茂坪田 健次郎井上 健司山田 久陽池田 孝則Sistare D. FRANK
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抄録

ICH S1C(R2)で規定されている2年間げっ歯類がん原性試験におけるヒト曝露の25倍による高用量選択は、6か月間rasH2-Tgマウスがん原性試験(以下rasH2-Tgマウス試験)には一般的に許容されない。そこで我々はrasH2-Tgマウス試験の高用量選択に適切な曝露比を検討するために、rasH2-Tgマウス試験及び2年間げっ歯類試験が実施された53薬物(rasH2-Tgマウス陽性13薬物、同陰性で2年間げっ歯類試験陽性22薬物、及び両モデル陰性18薬物)の添付文書、申請資料及び公表論文から、腫瘍が発生した用量における最大推奨臨床用量に対するAUC比(AM)あるいは体表面積ベースの用量比(DR)を調査した。

その結果、rasH2-Tgマウスにおける腫瘍発生用量は、遺伝毒性陽性の6薬物では0.05~5.2倍DRで、遺伝毒性陰性の7薬物では0.2~47倍AM/DRであった。病理組織学的リスク因子(HPRF:肥大、過形成、変異細胞巣及び前がん病変)に関しては、26薬物で50倍AM/DR未満でHPRFが発生した。1薬物では211倍AMでHPRFが発生したが、1用量のみの試験であった。2薬物ではHPRFが350倍AM以上のみで発生したが、発生した過形成にrasH2-Tgマウス及び2年間ラット試験における腫瘍発生との関連は認められなかった。19薬物ではHPRFの発生が見られず、5化合物ではHPRFに関するデータが得られなかった。以上の結果から、曝露比50倍を超える高用量はrasH2-Tgマウス試験における意義がないことが示された。

本講演では、2017年に製薬協加盟企業を対象としたrasH2-Tgマウス試験に関するアンケート調査の結果についても併せて紹介する。

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