日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: AWL2
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受賞者講演
質量分析法を基盤とした生体金属の毒性学的研究
*小椋 康光
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抄録

ヒトの生体を、構成している元素という観点から見てみると酸素 (65%)、炭素 (18%)、水素 (10%)、窒素 (3.0%)、カルシウムおよびリンといった存在量が重量比で1%を超える元素のみで全体の98.5%を、0.01%を超える硫黄、カリウム、ナトリウム、塩素およびマグネシウムまで加えると全体の99.3%を占める。一般に、生体内の存在量が0.01%以下の金属などの元素を生体微量元素といい、生体内化学反応の制御に関わったり、環境中から混入した生命機能が無いか、あってもいまだ不明であったりする元素である。生体微量元素は、その名の通り“微量”であるため、生体内ではその存在を測定すること自体を目的とする研究が長らく行われてきたが、生体金属・元素の生理機能や毒性を正しく理解するためには、単にその存在量すなわち総量を把握するだけでなく、存在形態(タンパク質に結合しているのか、低分子化合物で存在しているのか、イオン状なのかなど)及び空間情報(細胞内や組織内のどのような場所に局在しているのかなど)の把握が必要となる。生体金属の存在形態及び空間情報を把握する方法として、いわゆる無機の質量分析計と呼ばれる誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)を基盤とした分析法を活用した研究を実施してきた。主な分析法として、1)HPLCの検出器としてICP-MSを用いたLC-ICP-MS法、2)生体金属の組織イメージングを行うためのレーザーアブレーション(LA)-ICP-MS法、3)一細胞や一粒子分析が可能なsingle particle/single cell ICP-MS(sp/scICP-MS法)、さらに最近ではHPLCに代わる新たな分離手法として非対称フロー・フィールドフロー・フラクショネーション(AF4)を用いたAF4-ICP-MS法などを活用し、生体金属/類金属の生理作用や毒性機構の解明に注力してきた。

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