主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【目的】放射線照射が雌性生殖器に影響を与えることは知られているが、受けた照射時期や線量の違いによる発育後の生殖器への影響について現在まで詳細な報告はない。今回我々は、胎仔期、新生仔期、離乳期及び性成熟早期にそれぞれγ線照射されたラットについて、27週齢時における卵巣発育の影響を調査した。
【方法】雄のEkerラットと雌のF344ラットを交配させ、胎生15日(FD15)、19日(FD19)、生後5日(PND5)、20日(PND20)及び49日(PND49)それぞれに、0.5または2 Gyのγ線を単回照射した。この他、無照射の対照群を設けた。F1動物を27週齢まで飼育し剖検を行い、卵巣、子宮及び膣のHE染色標本を作製し病理組織学的検査を行った(各群n=10~22)。全ての卵巣について、黄体数(旧黄体及び新生黄体)と卵胞数(胞状卵胞、二次卵胞以下及び原始卵胞)をカウントした。原始卵胞のカウントにはPCNA染色標本を用いた。
【結果及びまとめ】2 Gyでは、FD15、PND5及びPND20照射群で黄体と卵胞の枯渇がみられた。失われた卵胞顆粒膜細胞の代わりに、通常は精巣にて分化するセルトリ細胞様の細胞からなる管腔構造が多数認められた。FD19照射群の卵巣では、γ線に対する抵抗性がみられた。PND49照射群では、黄体数の減少は認められなかったが、原始卵胞を含む卵胞数は減少していた。0.5 Gyでは、どの群の卵巣においても一見、病理組織学的には正常にみえたが、カウントの結果、FD15及びPND5照射群で卵胞数の減少が認められた。γ線の卵巣毒性について、同じ線量でも照射時期の違いによりその後の卵巣発育に大きな違いが生じ、変化の程度はγ線の線量に依存することが分かった。また、通常の病理組織学的検査では見落とされる可能性がある原始卵胞の減少について、定量解析により明らかとなった。