2018 年 60 巻 3 号 p. 223-229
症例は40歳,男性.前医で上部消化管内視鏡(esophagogastroduodenoscopy;EGD)にて前庭部小彎に10mm大の隆起性病変(0-Ⅱa)を認め,精査目的で当院受診となった.背景胃粘膜に萎縮性変化は認めず,同病変に対して内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を施行した.病理組織学的には高分化型管状腺癌(粘膜内癌)であり,免疫組織化学染色ではCDX2とCD10が陽性,MUC5ACとMUC6が陰性で腸型形質を発現していた.周囲の胃粘膜において鏡検法でHelicobacter pylori(HP)は認めず,血清HP抗体と尿素呼気試験は陰性であり,HP除菌歴もなかった.本症例はHP未感染の患者に発生した腸型形質を有する胃癌であり,比較的まれなため報告する.