主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
ヒトiPS細胞由来の心筋細胞 (iCellCM2) は、医薬品の研究開発で広く使用されている。しかしiPS由来心筋細胞はプライマリーの心筋細胞に比べ、ミトコンドリア量、収縮測定の点で課題等がある。今回、配向させたiPSC由来心筋細胞の成熟機能の評価とその効果を検討した。
[方法] 細胞一定方向に培養することが可能な配向プレート(王子CellArray-Heart)と一般的に使用される平板上に播種した2種類のiPS細胞由来心筋細胞(iCellCM2)の成熟度に関して運動活動応答から比較した。自動運動活動、ミトコンドリア、サルコメアのイメージングは、SI8000、FDSS、CQ1などの機器を使用して評価した。さらに、2種類の心筋細胞に対する薬物反応も比較した。成熟因子はRNAseqによるRNA発現とパッチクランプによる電気生理応答によって調べた。
[結果] 配向iPS細胞由来心筋細胞は、成熟度、ミトコンドリア細胞数、サルコメアアラインメント、心拍数、弛緩速度の増加を示した。成熟度を示す様々な鍵因子のRNA発現も増加した。さらにパッチクランプ測定により、脱分極電圧の低下、最大拡張電位の増加、活動電位の延長など、成熟を示唆する応答を示した。また、配向プレートと平坦プレートで培養した心筋細胞の間で薬物反応に違いを示した。
[結論と考察] 配向iPS細胞由来心筋細胞が成熟度を促進することを見出した。 この細胞は、成人の心筋の薬物評価に有用なツールであるだけでなく、心再生医療への応用可能性が示唆された。国際的な動物代替の流れがある状況の中、配向プレートを用いた成熟化細胞での研究は薬剤評価研究分野で有用な方法となりうる。