日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS4-1
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公募シンポジウム4: New modalityに対する初期毒性評価戦略
次世代モダリティのオフターゲット毒性の予測・評価に関する考察
*井上 貴雄
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抄録

 近年、アンチセンスやsiRNAなどのRNAを標的とする核酸医薬の実用化が進んでいる。また、核酸医薬品と同様にRNAと結合することで機能するRNA標的低分子医薬の臨床開発が進んでおり、翻訳やスプライシングを制御する品目が既に上市されている。また、新たなノックダウン型モダリティとして、タンパク質分解医薬の開発が進んでおり、数十の開発品が臨床試験段階にある。これらの次世代医薬品については、本邦が得意とするメディシナルケミストリーを生かした創薬が可能であること、また、核酸医薬に比べて薬物送達の観点から優位性があることなどから、国内においても開発が活発化している。

 以上に示した核酸医薬、RNA標的低分子医薬、タンパク質分解医薬の安全性評価の観点では、オフターゲット作用に明確な種差があることから、動物を用いた非臨床試験だけでは毒性発現を予測することが困難と考えられる。そこで、核酸医薬のハイブリ依存的オフターゲット毒性については、ヒトRNAデータベース、ヒト細胞、遺伝子発現変動解析(マイクロアレイ等)を組み合わせたオフターゲット評価法が活用されているが、RNAレベルで発現変動を評価する手法では、siRNAやRNA標的低分子医薬の翻訳抑制の機序を介したオフターゲット毒性や、タンパク質分解医薬のプロテアソーム依存的オフターゲット毒性を予測できないという問題がある。この課題に対し、国立衛研ではプロテオミクスを用いたオフターゲット評価法の構築を検討している。

 本講演では、多様化するモダリティの開発動向を俯瞰するとともに、我々が行なっているオフターゲット毒性の予測・評価法に関する取り組みについて紹介し、次世代モダリティのオフターゲット評価の在り方について議論したい。

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