日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: OS3-4
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公募シンポジウム3: 胆汁排泄、胆汁うっ滞評価の新機軸 - 胆汁排泄、胆汁うっ滞のヒト予測向上を求めて
透過試験による薬物胆汁中排泄評価が可能なヒト肝細胞培養手法の構築
*荒川 大中園 優也玉井 郁巳
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抄録

薬物の主要な消失経路の一つである胆汁中排泄過程は、近年合成される医薬品候補化合物の分子量の増大およびP450系薬物代謝酵素による代謝反応回避のため、評価の重要性が高まっている。薬物及び胆汁酸などの胆汁中排泄は、肝細胞の胆管側膜に局在するトランスポーターを介する。そのため、薬物相互作用が懸念されること、また胆汁酸の胆汁中分泌を薬物あるいはその代謝物が阻害し、それらのうっ滞による肝障害を引き起こす。さらには胆汁中に排泄された薬物は腸管で再吸収を受け、体内滞留性に影響を与える(腸肝循環)。これら過程には種差があるため、ヒト肝細胞を用いたin vitro評価系は創薬において有用と考えられる。しかし従来のヒト初代培養肝細胞では、胆管腔は肝細胞同士の細胞間に閉鎖系として形成されるため、胆管腔中に分泌された胆汁の回収が技術的に難しい。そこで、演者らは従来系の課題となっている胆汁中成分の回収が可能なヒト肝細胞培養システムの構築を目指した。肝細胞の胆管腔形成を促進する因子を探索した結果、接着タンパク質claudinを見出した。claudinをコーティングした培養器材にヒト肝細胞を培養したところ、肝胆管腔が培養器材側に開口した。この肝細胞培養モデルicHep (induced open-form canalicular hepatocyte)を用い、透過試験による薬物の胆汁中排泄過程の評価を行ったところ、胆汁排泄トランスポーターの典型基質の血液側から胆汁側への一方向性輸送が観察された。さらに、透過試験により推定された薬物の胆汁中排泄クリアランスは、ヒトin vivoの報告値と良好に相関した。以上より、icHepは薬物の胆汁中排泄過程を透過試験により評価することが可能であり、創薬における薬物の動態と安全性の予測に大きく貢献することが期待される。

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