主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
近年、核酸医薬品の開発は益々盛んになっており、腎毒性、肝毒性、免疫原性などの毒性に関する研究や、非臨床安全性評価に係るガイドラインの整備が進められている。しかしながら、上市された9品目のアンチセンス核酸のうち、中枢神経系(CNS: central nervous system)を標的としたものはわずか1品目(Nusinersen)であり、CNSへの毒性学的な影響やその機序は十分に解明されていない。1本鎖のアンチセンス核酸(ASO: antisense oligonucleotide)を脳室内投与あるいは髄腔内投与した際の毒性として、現状、2つの神経症状が課題となっている。投与後1時間以内に発現する痙攣等の急性神経毒性は核酸の立体構造やAMPA受容体との関連性が報告されている。一方で、投与後数日経過した後に発現する後肢の機能的異常等の遅発性神経毒性はわずかしか報告されておらず、グリア細胞の活性化の関与が疑われているが未だ未解明なままである。今回、我々はASOをマウス脳室内投与した際の遅発性神経毒性について、ASOの組織内分布及び病理組織学的変化を明らかにするともに、分子生物学的解析を実施した。これら毒性の経時的な病態変化、急性毒性との関係性、更には化学修飾が遅発性神経毒性に及ぼす影響について報告する。