主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
腸肝連関は様々な疾患の発症や進行に多くの影響を与える。腸管バリア機構の破綻はLPS等の肝臓への流入を引き起こし、肝臓病態を悪化させる要因の1つとなる。本試験はデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)誘発性大腸炎モデルマウスを用い、大腸炎の有無が非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)病態に与える影響を探索することを目的とした。試験は6週齢雄性C57BL/6jマウスを用い、1.25%DSS水を1週間毎の間歇飲水投与を3週間実施し、コリン欠乏メチオニン低減アミノ酸食(CDAA食)を給餌したDSS+CDAA群、水道水を与え、CDAA食を給餌したCDAA群、DSSを飲水投与し通常食を与えたDSS群、そして水道水及び通常食を与えたControl群の4群構成とした。解剖時には、大腸及び肝臓を採取し、遺伝子発現解析及び病理組織学的解析を実施した。DSS群の大腸において、炎症関連遺伝子発現の上昇及び病理組織学的な炎症が観察され、大腸炎の誘発が確認された。また、肝臓においても炎症関連遺伝子発現の上昇傾向を示し、大腸炎の波及が示唆された。CDAA群の肝臓において、炎症・線維化関連遺伝子発現の上昇、及び病理組織学的な肝細胞の脂肪化並びに炎症が観察され、NASH病態の惹起が確認された。DSS+CDAA群の肝臓において、TLR4を含む一部の炎症関連遺伝子発現が増強し、病理組織学的にCXCL16陽性細胞が増加した。さらに、肝臓マクロファージのM2分極傾向によるTGF beta及びalpha-SMAの遺伝子発現が増強傾向を呈し、腸管バリア機構の破綻が肝線維化病態を増悪させる可能性が示唆された。DSS投与によって惹起された大腸炎は腸管バリア機構を破綻させ、血流を介して肝臓へのLPS等の流入を増大し、その結果CDAA食によって惹起されたNASH病態を増悪させたものと考えられた。