主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
化学物質の遺伝毒性評価では、Ames試験等、指標遺伝子を介して突然変異を検出する試験法が用いられてきた。近年、DNAの相補鎖の情報を用いて、次世代シーケンサーのエラー頻度を約1/107 bpに低減するerror-corrected sequencing (ECS) が開発された。ECSは全ゲノムシーケンシングによる突然変異の直接検出を可能とし、従来の遺伝毒性評価の課題解決につながると期待されている。これまでに、ECS (i.e. Hawk-SeqTM) を用いて、Ames試験菌株やマウス等で、多様な変異原によるゲノム変異を検出できることが報告されている。我々は、ECSを遺伝毒性試験に応用するためには、感度や施設間再現性等、その有用性を検証することが重要と考えた。そこで今回、日本環境変異原ゲノム学会MMS研究会にて共同研究を開始し、ECSの有用性検証を目的に、変異頻度ならびに変異パターンの観点からHawk-SeqTMの感度や施設間再現性を確認することとした。まず、複数施設で実施可能な共通プロトコル策定のため、実験機器やシーケンサーの違いによる解析への影響を調べた。電気泳動装置については、Agilent 4200TapeStationと2100Bioanalyzerで同様にライブラリの品質管理、並びにその調製が可能であることを確認した。また、イルミナ社の複数種のシーケンサー間で、溶媒対照群におけるC>G等のエラー頻度に最大2倍の差が認められた一方、変異原曝露による変異頻度ならびに変異パターンは同等であった。現在、これらの検討を基に共通プロトコル、技術移管フローを策定し、技術移管を実施している。今後は変異原を曝露したマウス由来のDNAを用いて施設間における変異頻度や変異パターンの再現性を確認し、有用性の検証を行っていく予定である。