主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
化学物質の安全性評価における動物実験の代替案の一つとして、in silico手法は近年の機械学習技術の進歩により大きな注目を集めている。ITSv2はOECD Guideline No. 497に収載されている信頼性の高い皮膚感作性ハザード及びUN GHS分類に基づく多段階リスク評価手法であるが、LLNA EC3値のような定量的なリスク評価には対応していない。本研究では、LLNA EC3値および皮膚感作性AOP(Adverse Outcome Pathway)の各Key Eventに関するin chemico/in vitro試験データを有する195物質を用いて、各試験データ、分子記述子、リード・アクロスの考え方に基づく距離情報を使用した機械学習モデルとITSv2ハザード評価を組み合わせた、化学物質のLLNA EC3値を定量的に予測するin silico評価系を開発した。二つのCatBoostモデルとITSv2ハザード評価を組み合わせた予測系のパフォーマンスは、R2値として学習用データで0.862、内部検証用データで0.550、外部検証用データで0.617であった。更に、ITSv2ハザード評価で誤分類であった物質は、想定されているAOPを表現する各試験と皮膚感作性との対応に合致しない性質を有していると考え、ITSv2ハザード評価の正誤を当予測系の適用範囲の閾値として定めた。ITSv2ハザード評価が誤っていた物質を除いて再評価したところ、R2値として学習用データで0.963、内部検証用データで0.681、外部検証用データで0.815であり、予測精度が大幅に向上した。また、適用範囲内の物質のみでCatBoostモデルを再構築することで、R2値として学習用データで0.995、内部検証用データで0.787、外部検証用データで0.824となり、予測精度が更に向上した。