日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-047S
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学生ポスター発表賞 応募演題
スルフォラファンによるNrf2非依存的なセレノプロテインP発現抑制機構
*叶 心瑩外山 喬士斎藤 芳郎
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抄録

肝臓から血中に分泌されるセレン含有タンパク質セレノプロテインP (SeP) は、高血糖に伴いその発現が増加する。過剰なSeP分泌はインスリン抵抗性を増加することから糖尿病増悪因子であり、有望な新規治療標的である。しかし、SePの過剰分泌を阻害する薬剤についての研究はほとんど進んでいない。最近我々はスルフォラファン (SFN) が、SePの発現を抑制することを見出した。そこで、本研究では、SFNによるSeP発現抑制作用の解明を目指した。 培養肝細胞HepG2はSePを産生し培地中に放出するモデル細胞である。そこでHepG2をSFNで処理すると、細胞内および培地中SePがいずれも減少した。SFNはSePのmRNAレベルにはあまり影響せずに、タンパク質量を顕著に減少させたことから、分解亢進が関与すると考え、リソソーム阻害剤による検討を行った。その結果、リソソーム阻害剤でSFNによるSePの減少が完全にキャンセルされた。さらにリソソーム内pH指示薬Lysotrackerを用いた検討から、SFNはリソソームの酸性化を亢進することも明らかとなった。SFNは転写因子Nrf2の活性化剤として知られている。実際SFNは上記条件でNrf2を活性化したが、リソソームの酸性化やSePの減少に対してNrf2 siRNAは効果を示さなかった。このことから、SFNによるSePの減少はNrf2非依存的な作用であると考えられた。また、マウスにSFNを投与すると、血漿中のSeP量が減少したことから、その作用は個体レベルでも認められた。SFNはNrf2活性化を介して様々な毒物の毒性軽減に関わることは周知であるが、Nrf2非依存な作用についてはあまり理解されていない。本研究からSFNにはまだ未解明な作用点が存在しており、複合的な作用によって健康増進作用を発揮することが示唆された。

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