主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【背景】薬剤性肝障害(DILI)は、医薬品の開発中止や販売中止の主要要因であり、その評価・予測法の確立が求められている。本研究では、未試験物質の毒性を類似物質の毒性情報から類推する、リードアクロス手法によるDILI評価手法の開発を最終的な目的とし、化学構造情報と毒性関連インビトロ試験結果を利用して基礎的検討を行った。【方法】米国FDAのDILIrankデータセットからDILI誘発性の薬物(DILI薬物)213種とDILI誘発性のない薬物(no-DILI薬物)74種を選択した。このデータセットから21種のDILI薬物、8種のno-DILI薬物を無作為に抽出して被験物質とし、残りを参照物質とした。これらの物質について、HepG2細胞を用いた細胞障害性試験並びにハイコンテント解析を実施した。また、10種のヒトP450分子種及びヒトUDP-グルクロン酸転移酵素に対する阻害作用をインビトロで評価した。分子記述子をalvaDescで計算し、計量的記述子を用いて物質間のユークリッド距離を算出した。【結果及び考察】物質間の全距離の分布の第一四分位を閾値として各被験物質の閾値以内に存在する参照物質を近傍物質として抽出し、近傍物質のDILI薬物の割合がデータセット全体の陽性率より高い場合に被験物質をDILI陽性、低い場合をDILI陰性と判定した。その結果、感度、特異度、一致率はそれぞれ0.714、0.750、0.724であった。次に、誤判定された6種のDILI薬物と2種のno-DILI薬物について、インビトロ試験結果を利用して決定木を作成してそれぞれの近傍物質をさらに選別したところ、6物質が正しく判定された。以上より、化学構造情報に基づくリードアクロスはDILI予測にも有用であること、またインビトロ試験結果を利用することでその精度向上が期待されることが示唆された。