日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P1-097S
会議情報

学生ポスター発表賞 応募演題
大規模毒性データベース利活用に向けたdeconvolution法の検討
*東 一織森田 勝久水野 忠快楠原 洋之
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

現在、公共データベース(DB)には毒性発現時の組織トランスクリプトームデータが豊富に蓄積されている。Deconvolutionはトランスクリプトームデータより試料中の免疫細胞比率を推定する手法であり、DB中のデータが持つ潜在的な免疫応答の情報を抽出する。一方、同手法に関して組織特異性や種差を考慮したモデリングが推定性能に及ぼす影響は不明であった。本研究では、大規模毒性DBへの適用に向け、deconvolutionにおける組織特異性と種差の影響を評価した。低分子化合物により誘導した多様な肝障害モデルでのRNA-seqデータと免疫細胞比率が対応する評価用データセットを自ら取得し、組織特異性を考慮したモデリングの影響を評価した。結果、肝臓に固有な細胞種を考慮したモデリングが高い推定性能を示すことを見出した。公共DBより取得したアセトアミノフェン投与時の経時データを解析し、免疫細胞の変化を推定・検証したところ、提案モデルは従来モデルよりも高い推定性能を示した。Deconvolutionはヒトやマウスへの適用が主であり、毒性評価で頻用されるラットに適したデータセットや手法が存在しない。そこでラットの免疫細胞のRNA-seqデータセットを自ら取得し、ラット特異的なdeconvolutionモデルを構築した。ラットの毒性データに適用する際、本モデルはヒトやマウスのデータを援用したモデルと比較して優位性が示された他、大規模毒性DBのデータを解析することでシクロヘキシミドとLPSが惹起する免疫細胞の挙動が類似するといった新規知見が得られた。 以上より、組織特異性や種差の考慮がdeconvolutionによる免疫応答の精緻な推定に重要であることが示された。これらを考慮したモデルを大規模毒性DB適用することで、免疫応答に関する集約的な知見が取得可能となり、毒性発現機序の理解が進展すると期待される。

著者関連情報
© 2023 日本毒性学会
前の記事 次の記事
feedback
Top