主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、脂肪肝(NAFL)から脂肪肝炎(NASH)や肝硬変に進行した状態を含む肝臓病の総称である。NAFLからNASHへの進行には酸化ストレスの関与が大きい。本研究では、マウスや培養細胞を用いたNAFLDモデルでミトコンドリア機能に必須なミトコンドリアキャリアファミリー(MCF)の発現や機能変化と酸化ストレスとの関係について検討した。超高脂肪(HFD群)または対照飼料(CND群)を12週間給餌したICRマウスをNAFLDモデル、遊離脂肪酸を曝露させたHepG2細胞をin vitro NAFLDモデルとして使用した。CND群に比べHFD群ではBMI及び肝トリグリセリド濃度が有意に増加し、耐糖能の低下が示された。SLC25属33遺伝子の肝mRNA発現変動を比較した結果、HFD群ではSlc25a17が増加し、Slc25a3(isoform B)及びSlc25a13が減少した。さらに、活性酸素種(ROS)除去を担う酵素活性に必要なCuを輸送するSLC25A3とROS発生との関係をHepG2細胞で追究した。野生型(wt)細胞に比べ、SLC25A3欠損させたHepG2/C1及びC3細胞ではミトコンドリア膜電位(MtMP)に変化はなかったがROSが増加した。ROSの増加はGSHジスルフィドレダクターゼ(GSX)及びGSHペルオキシダーゼ(GPX)1のmRNA発現減少と相関した。さらに、HepG2/C1細胞では酸化還元反応に重要なCu(I)の細胞内量の減少、分布の変動が示唆された。以上、脂肪肝によるSLC25A3発現・機能の低下は肝細胞の酸化還元サイクルを破綻させ、軽微だが慢性的なROS産生を促すことが示唆された。今後、NAFLDにおける酸化ストレス発生機序におけるSLC25A3(isoform B)の役割解明が必須である。