主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【背景】髄腔内投与は核酸薬などの投与経路として選択されることが多く、我々は臨床で使用されているスパイナル針及び髄腔内カテーテル挿入による投与を検討した。更に、髄腔内投与操作時に得られた脳脊髄液(CSF)で生化学的検査を行い、その評価を行った。【材料及び方法】年齢4~7歳齢のカニクイザル雄4頭を使用した。 スパイナル針による投与は週1回投与とし、計4回実施した。投与方法はイソフルランにより麻酔を維持し、腰椎穿刺で実施した。スパイナル針は25Gのスピノカンまたはペンカンを使用し、生理食塩液1 mLを緩徐に投与した。また、腰椎穿刺時に得られたCSFを採取し、生化学値を測定した。 髄腔内カテーテル挿入の検討は、同4頭を使用し、麻酔下で腰椎から外径3.5fr.のカテーテルを挿入した。末端にインジェクションプラグを装着し皮下に埋め込んだ。CSF採取時はこのプラグを皮膚から穿刺し、髄腔内に留置されたカテーテルよりCSFを採取した。髄腔内カテーテル埋め込み動物は術後約2週間維持した後、剖検した。【結果】髄腔内投与の成功率は、ペリカンよりスピノカンの方が高かった。一部の動物では腰椎穿刺時に脳脊髄液の逆流が認められないことがあった。髄腔内カテーテル埋め込み動物では、皮下ポート部から投与やCSF採取が可能であったが、CSF採取ができない場合もあった。 脳脊髄液の生化学検査値は、基本、既報値と同様であった。スパイナル針穿刺及び髄腔内カテーテル挿入のいずれでもCPKやASTが高値を示すことがあった。CPKの高値を示す動物は髄腔内投与に時間を要した場合が多く、脊髄や周辺組織に接触したことにより高値を示した可能性が考えられ、投与手技確認や薬物影響のマーカーとなる可能性が考えられた。 以上、今回、サルへの髄腔内投与の複数の方法を検証し、CSFの生化学検査を取り入ることで投与手技や評価の幅を広げる可能性を示した。