主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
【背景】
臓器毒性の発現機序の一つと知られるミトコンドリア毒性をin vitroで評価する手法として細胞外Flux Analyzerを用いて細胞内酸素消費率(OCR)及び細胞外酸性化速度(ECAR)への影響を調べる評価法が挙げられるが,OCR及びECARの変化の程度から臨床における臓器毒性発現リスクを推測することは容易ではない。そこで本研究では,ミトコンドリア毒性の有無と臨床情報が入手可能な化合物についてOCR及びECARへの影響を調べ,ミトコンドリア毒性を介した臓器毒性ポテンシャルの判断に活用できるか検討した。
【方法・結果・考察】
ミトコンドリア毒性の有無並びに臨床情報が既知の15化合物について細胞外Flux Analyzerを用いてOCR及びECARへの影響を調べた。細胞はヒト肝由来細胞株HepaRG®細胞を用いた。複数の化合物で化合物処置後のOCR及びECARの有意な変化が観察されたものの,これらの変化のみでは臨床における肝・心障害の発現有無を明確に区別することはできなかった。しかしながら,これらの変化が発現した最大変化率及び最小処理濃度に対する臨床用量における最高薬物血中濃度とのマージンを考慮して解析したところ,細胞外Flux Analyzerで得られた結果から臨床における肝・心障害の発現有無を明確に分離・区別できることが明らかとなった。以上のことは,化合物の有するミトコンドリア毒性ポテンシャルと臨床における血中薬物濃度を考慮した解析が,臨床での肝・心障害発現リスクの推定に有用であることを示唆している。
【結論】
細胞を用いたOCR/ECAR測定によるin vitroミトコンドリア毒性評価と臨床血中薬物濃度予測を組み合わせて解析することで,臨床での臓器障害発現リスクの推定に寄与することが期待される。