日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-279
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一般演題 ポスター
紫外線UVB吸収性物質を評価可能なヒトES/iPS細胞由来網膜色素上皮細胞を用いたin vitro光毒性試験法の開発
*小林 諒太松山 良子北本 幸子浅野 敬之
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抄録

 光毒性は、光反応性物質が局所的あるいは全身投与された後、皮膚や眼などの組織が光照射されることによって起こる。現在、化学物質の光毒性評価には3T3細胞を用いるin vitro光毒性試験法(OECD TG432)が広く利用されている。しかし、3T3細胞は紫外線UVBを照射すると細胞毒性を生じることから、UVAと可視光のみが光照射に用いられる。そのため、UVB吸収性物質を偽陰性と予測してしまう可能性がある。一方で、細胞を用いず光反応性を評価するROSアッセイ(OECD TG495)はUVBも照射可能であるが、偽陽性率が高いことが知られている。そこで、上記問題を解決し、UVB吸収性物質の光毒性を適切に評価可能な、ヒトES/iPS細胞由来の網膜色素上皮細胞(RPEs)を用いる新規試験方法を開発した。

 試験実施に必要なUVB耐性を確認するために、RPEsと3T3細胞にUVBを照射し細胞生存率を測定したところ、3T3細胞と比較してRPEsには高いUVB耐性が認められた。続いて、RPEsにUVB吸収性がある光毒性陽性物質、及び、陰性物質を処理した後、UVBランプを用いて光照射を行った。また、光毒性を評価するため、細胞生存率を測定した。その結果、UVB吸収性があり生体で光毒性があることが知られているが3T3細胞を用いるin vitro光毒性試験法では検出が困難な物質、ならびに生体では光毒性がないことが知られているがUVBを照射するROSアッセイで偽陽性となる物質について、新たに開発した試験法では光毒性の有無を正確に予測することができた。これらの結果から、当該試験法はUVB吸収性物質の光毒性評価に有用であると考えられた。

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