日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: P3-287
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一般演題 ポスター
SGX523はヒト肝キメラマウスにおいてアルデヒド酸化酵素による難溶性代謝物形成を介して腎毒性を引き起こす
*上原 正太郎保田 昌彦樋口 裕一郎米田 直央川井 健司山崎 浩史末水 洋志
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抄録

SGX523 は がん治療のためのc-Met チロシンキナーゼ阻害剤として開発されたが、腎尿細管への結晶沈着による腎毒性のため、臨床試験で開発中止になった。SGX523はアルデヒドオキシダーゼ(AOX)によって動物種特異的に代謝され、溶解度のかなり低い2-quinolinone SGX523となり、これが臨床的に観察される閉塞性腎症に関与していると考えられている。本研究では、ヒト肝キメラマウスによるSGX523の代謝と腎毒性を調べた。2-quinolinone SGX523生成酵素活性は、マウス肝細胞よりもヒト肝キメラマウスおよびヒトの肝細胞で高値を示した。さらに、ヒト化肝マウスの肝サイトゾル画分における2-quinolinone SGX523生成酵素活性は、ヒトAOX阻害剤であるラロキシフェンおよびヒドラジンによって阻害された。2-quinolinone SGX523の経口投与後の最高血中濃度、血中濃度時間曲線下面積および尿中濃度は、非移植マウスに比べてヒト肝キメラマウスで高値を示した。また、SGX523を反復経口投与したヒト肝キメラマウスにおいて、血中尿素窒素値および血清クレアチニン値の増加に加えて、尿細管への異物の蓄積と尿細管間質への炎症細胞浸潤が認められた。これらの結果から、ヒト肝キメラマウスはSGX523の代謝と毒性を理解するための重要な動物モデルであることが示唆された。

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