日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S1-3
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シンポジウム1: 医薬品開発におけるバイオマーカー戦略の現状と展望
薬剤性間質性肺炎の新規バイオマーカーの探索と検証、及びその評価
*斎藤 嘉朗齊藤 公亮荒川 憲昭
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抄録

厚生労働省では、予測・予防型の医薬品安全対策を進めている。薬剤性間質性肺炎(DILD)は日本人で発症報告数が多い重篤副作用である。DILDには様々な病型が存在するが、びまん性肺胞傷害(DAD)型は特に死亡や後遺症につながることから、DADを早期に判別し適切な治療を開始することが重要である。我々は、国内の4大学病院等と共同で患者試料等の研究を行い、DILDのバイオマーカー探索を行った。

その結果、DAD発症時に高値となって回復時には低下し、また他のDAD以外のDILD病型(器質化肺炎や非特異性間質性肺炎等)との判別に有用な血清マーカーとして、ストラテフィンを見出した(Arakawa N. et al., Nat Commun. 2022;13:5854)。本変動は別群のコホートでも検証でき、さらにDAD型のDILDと他の関連疾患(細菌性肺炎、肺がん、COPD等)との判別にも有用であった。なお、当該バイオマーカーの血清中濃度分析法としては、独自のELISA系を構築し、必要な項目についてバリデーションを行ったものを用いた。さらに、剖検試料を用いた免疫染色の結果、DAD症例の細気管支上皮等にストラテフィンが認められ、また培養細胞を用いた解析からp53及びアポトーシス依存的な細胞外へのストラテフィン放出が示唆された。以上より、DAD型のDILDマーカーとして、ストラテフィンが有用であることが強く示唆された。また別途、薬剤性と特発性のILDを判別しうるバイオマーカーとして、リゾホスファチジルコリンも併せて見いだした(Saito K. et al., Sci Rep. 2022 ;12:19819)。これらの結果を基に、PMDAのファーマコゲノミクス・バイオマーカー相談を受けた。

講演では、上記例を紹介後、最後にこれら経験を通じた、安全性バイオマーカーの確立方法について提案したい。

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