日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S14-3
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シンポジウム14: 細胞周期制御の破綻に起因する発がん研究の展開
放射線により誘発されるがんに観察される染色体再配列
*臺野 和広渡辺 光石川 敦子高畠 賢今岡 達彦柿沼 志津子
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抄録

 染色体異常は放射線被ばくの生物学的マーカーとして古くから研究されてきた。また、放射線はDNAの二重鎖切断を誘発し、その誤修復によって生じた染色体転座や逆位といった染色体再配列が原因となり、発がんを引き起こすことが知られている。近年では、次世代シーケンス技術の発展により、放射線被ばくによって発生した腫瘍に見られる染色体再配列の特徴や、DNA二重鎖切断の修復過程に関する情報を包括的に解析することが可能となってきた。一方、放射線による発がんのリスク研究では、自然発症と被ばくに起因するがんを区別できないために、特に低線量の被ばくにおいて、がんリスク評価に不確実性が存在する。そこで我々は、放射線によるがんリスク評価に有用な被ばくに起因するがんの特徴(分子指標)を明らかにすることを目的とし、動物モデルを用いて、放射線によって誘発された腫瘍に観察されるゲノム異常の研究に取り組んでいる。

 本講演では、放射線により誘発される染色体再配列を介した発がんの事例として、放射線照射群に発生した腫瘍のRNAシークエンス解析により同定したチロシンキナーゼ融合遺伝子等の融合遺伝子やその生成に関わる染色体再配列や誤修復の特徴、ならびに、全ゲノムシーケンス解析により観察されたゲノム異常や染色体再配列の特徴について紹介する。

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