日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S19-3
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シンポジウム19: 【日本癌学会合同シンポジウム】抗がん剤開発と毒性
新規抗体薬物複合体DXd-ADCー抗がん剤の課題を克服するために
*眞鍋 淳
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抄録

 がんの全身療法である薬物療法は、薬物が正常な細胞にも作用することで様々な副作用を惹起する。そのため、副作用を低減し治療効果を高めることを目的に、がん組織への集積を狙ったDDS技術の開発や薬剤の開発が進められてきた。抗体−薬物複合体(Antibody Drug Conjugate: ADC)は、薬効が期待できるが副作用も強い殺細胞性薬物と、副作用が少ないが薬効が不十分な場合もあるモノクローナル抗体を結合させたものであり、標的抗原を発現するがん細胞に直接結合して薬物を送達することで選択的かつ効果的にがん細胞を死滅させる。最小有効用量と最大耐量の間の治療用量域の拡大により、一般的ながん化学療法剤治療に比して、大きな抗がん効果の発揮が期待される。すでに複数のADCが上市され、さらに進行がんに対する多くのADCの臨床開発が進行中である。第一三共(株)が創製したトラスツズマブデルクステカン(T-DXd、DS-8201)は、DNAトポイソメラーゼⅠ阻害剤であるエキサテカン誘導体DXdを、腫瘍細胞内で切断可能なリンカーを介して抗HER2抗体に結合したADCである。その主な特徴は、1つの抗体あたりの薬物結合比が平均8と高く均一性が高いこと、バイスタンダー効果による標的分子に依存しないヘテロな腫瘍への強力な薬効を有すること、さらに体内循環中で安定性が高く広い治療域が期待できることである。本演題では、T-DXdの技術的特徴と有効性について要約するとともに、副作用プロファイル、特に間質性肺炎(ILD)について、臨床及び非臨床の両面から議論したい。

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© 2023 日本毒性学会
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