日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-2
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シンポジウム20: 【日本免疫毒性学会合同シンポジウム】免疫毒性学ってナンだ? −“働く免疫細胞”に起こる毒性影響,活性化と抑制 −
医薬品モダリティの多様化と免疫毒性評価のこれから
*串間 清司
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抄録

免疫系は様々な担当細胞が複雑に相互作用しながら機能している。医薬品開発における非意図的な免疫系に対する作用は,免疫抑制あるいは免疫亢進により重篤な副作用を引き起こすことがあることから,非臨床あるいは臨床段階で免疫毒性を適切に評価することは重要である。ICHガイドラインでも免疫毒性の評価は求められており,免疫毒性ガイドライン(ICH S8)にはweight of evidence評価において考慮すべき事項や試験法が記載されている。これまでの免疫毒性評価の多くは低分子医薬品による免疫抑制に主眼が置かれてきた。免疫抑制の評価については,ガイドラインを参考に適切な評価ができていると感じるが,近年は医薬品の作用様式が多様化しており,これまでの試験法やICH S8に記載されている評価では必ずしも十分ではないケースが増えてきている。医薬品のモダリティは低分子医薬品に始まり,抗体医薬,細胞加工製品,遺伝子治療等製品,核酸医薬品など多岐に渡る。抗体医薬ではサイトカインリリースシンドローム(CRS)や自己免疫疾患の増悪など免疫刺激や免疫亢進による毒性が懸念となり,CRSについてはガイドラインには記載のないものの製薬企業やCROにてヒトの細胞を用いたin vitroの評価系が整えられ,実際に多くの抗体医薬の開発において実施されている。抗体医薬以外の各モダリティにおいても免疫毒性の懸念に対して画一の試験系を適用することが難しいため,ケースバイケースでの評価が実施されている。本発表では,作用様式が今後もますます複雑になる中,現状では十分ではない評価系やガイドラインについて取り上げるとともに,発表を通じて今後の産官学連携による試験系の拡充や環境の整備につながれば幸いである。

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