日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S20-4
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シンポジウム20: 【日本免疫毒性学会合同シンポジウム】免疫毒性学ってナンだ? −“働く免疫細胞”に起こる毒性影響,活性化と抑制 −
HLA遺伝子導入マウスを用いた特異体質薬物毒性研究
*青木 重樹
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抄録

近年、特異体質薬物毒性の発症に、ヒト白血球抗原(HLA)が関係することが示唆されている。例えば、抗HIV薬アバカビルによる過敏症の発症頻度は、HLA-B*57:01保有者で数百倍高まる。しかし、HLA多型と薬物毒性との間には未だ多くのブラックボックスが存在し、医薬品開発や臨床現場における大きな問題となっている。そこで我々は、HLAの遺伝子導入マウス(HLA-Tg)を作出して、そのメカニズムの解明を試みている。

ヒトで起こるHLA依存的な免疫反応を再現するため、ヒトとマウスのキメラ型HLA遺伝子を導入したマウスを作出している。実際にHLA-B*57:01-Tgにアバカビルを曝露したところ、CD8+ T細胞を含めてリンパ球の増殖・活性化が確認された。しかし、薬物の投与のみでは期待するほどの強い毒性所見は認められず、背後にさらなる要因が潜んでいる可能性が考えられた。結果的に、薬物による免疫活性化の裏でPD-1を含む抑制性免疫も亢進していることが見出され、そのノックアウトに加えてCD4+ T細胞の除去も行うことで、免疫毒性を強力に惹起できることが明らかとなった。

また、HLAの関与する薬物毒性の発症には組織特異性がある。特に我々は皮膚に着目した検討を進めており、表皮細胞ケラチノサイトがHLA-B*57:01依存的にアバカビルに対して小胞体ストレスを発することを見出した。また、HLA-Tgにおいてもアバカビルの投与直後に表皮部分で強い小胞体ストレスの惹起を認めた。さらに、ケミカルシャペロンを用いた小胞体ストレスの緩和によって毒性発症を抑えられることも明らかとなり、HLA依存性の薬物毒性に小胞体ストレスが関与することが示唆された。

本発表では、HLA-Tgを用いた薬物毒性研究から最近進めているHLA分子の細胞内挙動の解析まで、特異体質性の免疫毒性発症に至るメカニズムを紹介する。

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