日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S22-4
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シンポジウム22: 【日本毒性病理学会合同シンポジウム】日本毒性病理学会からのトピック:病理学的観点から見た化合物による毒性反応の種差
実験動物における膵臓の形態的種差と毒性発現種差の事例
*涌生 ゆみ
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抄録

膵臓は内分泌及び外分泌の二つの機能を持つ唯一の器官である.外分泌組織である腺房及び導管が大部分を占め,残りを脈管,神経,結合織並びに内分泌組織である膵島が占める.毒性試験において膵臓が標的臓器となることは少ないが,膵炎などが引き起こされると,薬剤開発の上で大きな問題となる.今回は膵臓毒性を理解するために,動物種間の形態的違いを把握することを目的とし,また動物種による毒性発現形態が異なった1例としてカドミウム(Cd)毒性について紹介する.

膵臓は,解剖学的並びに組織学的に動物種差がある.解剖学的には,腸間膜の間にびまん性に広がる腸間膜型(ウサギ),コンパクトな塊で存在する充実型(ハムスター,イヌ,サル,ヒト),その中間型(ラット,マウス)に分けられる.組織学的に,外分泌には動物種差はないが内分泌器官である膵島の細胞構成に種差が見られる.ラットでは中心部をB細胞が占め辺縁にA細胞およびD細胞が存在する膵島がほとんどである.イヌではB細胞が島全体に見られ,A細胞は島の辺縁あるいは中央部に少量,D細胞も島の中央あるいは辺縁に少量認められる.サルではA細胞が豊富な膵島,B細胞が豊富な膵島があり,A細胞が豊富な膵島ではA細胞は全体に広がりB細胞は辺縁部に集まる傾向があり,B細胞が豊富な膵島ではA細胞は中央部にB細胞と混在する傾向がある.膵島と腺房は密接に関係しており,血管分布の特徴に種差がある.ヒト,サル,イヌでは多くの血管が膵島を経由して外分泌部へ流れ込む(膵島腺房門脈系).ラット,マウスでは膵島腺房門脈系以外に外分泌部へ直接流れ込む動脈も多い.

ヒトのCd毒性として肝腎障害及び高血糖が生じることが知られている.Cdを静脈内投与したサルでは膵島細胞の空胞化,膵島の萎縮が生じたが,ラットでは膵島に形態的異常は認められず,外分泌部の変性・壊死が認められた.

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