日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S23-2
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シンポジウム23: シグナル伝達相互作用による発生制御機構とその破綻による発生毒性の予測
脊椎動物に保存された発生機構を制御するシグナル伝達ネットワーク
*入江 直樹
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抄録

脊椎動物は進化を通して多様な特徴を獲得してきた一方で、体の基本的な構造(ボディプラン)を構築する器官形成期は共通している。この背景にあるメカニズムはほとんどわかっていなかったが、近年の発表者らの研究から、発生段階の器官形成期に内在化された特性、すなわち安定性および変異や環境変動に対する頑健性、そして多面的に働く遺伝子の豊富さが寄与している可能性が浮上した。つまり、器官形成期はそもそも変異や環境ノイズでは表現型のバリエーションが生まれにくい発生段階である可能性を示唆しており、これが進化を通した体の基本構造の保守性をもたらしているのかもしれない。一方で、これら知見とは整合性がとれないようにみえる知見・仮説があるのも事実だ。例えば、体の基本構造ができる発生段階でみられる器官原基の間には密で相互依存的なシグナルネットワークが存在するため、胚性致死になりやすいという仮説である。実際、器官形成期は催奇形性物質などによって致死あるいは重篤な奇形をもたらしやすい。本演題では、近年の知見と従来の知見がどのように整合的に解釈できるのかについて、発生過程の頑健性あるいは脆弱性という観点から議論したい。

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