日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-2
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シンポジウム28: 【企画戦略シンポジウム】学際的毒性学を目指して:医療医学系への拡大
臨床医学系学会と毒性学:腎臓病学の視点から
*横尾 隆
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抄録

この度ご縁があって本学会員の末席に加えていただくことになったが、恥ずかしながらそれまで毒性学という学問があることすら知らなかった。まさに今回の総会のテーマである「毒性学ってナンだ」という状況である。残念ながら現状の医学教育において、医薬品の副作用について学ぶことはあっても系統立てて毒性学を学ぶ機会はほとんどない。腎臓は薬剤をはじめ様々な化学物質の臓器障害の標的となるだけでなく、それぞれの排泄経路となるため腎機能低下時の投与量調整が必要となり、医学分野の中でも腎臓病学は毒性学とアフィニティがあるように感じるが、その重要性についてはあまり語られていない。薬剤性腎障害診療ガイドラインにおいても医薬品のみの対応となっており、その他の科学物質や食品については触れられていない。実際に実臨床において医薬品以外の毒性について問題となる機会が少なく昨今の医学教育における知識量の氾濫から炙り出されてしまっている感がある。ただ、サリンやタリウムなどこれまででは考えられない化学物質による殺人事件などに対峙する必要が出てくることが今後予想され、今後医学教育の中で、少なくとも中毒の可能性を想起する能力と緊急での対応法のアルゴリズムなどは必要になってくるのであろう。今回、このような発表の機会を与えていだたいたことを契機に副題にある「―そしてその先に―」を考えて医学教育の中でもその重要性を認識したカリキュラム作りが可能となるか考えてみたいと思う。

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