日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S28-3
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シンポジウム28: 【企画戦略シンポジウム】学際的毒性学を目指して:医療医学系への拡大
中毒学から学際的法医学研究へ
*岩瀬 博太郎
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抄録

毒性学と中毒学はいずれもToxicologyの訳語としてあてられている。本邦においては、毒性学会と中毒学会、法中毒学会といった複数の学会があり、毒性学と中毒学が若干異なる意味合いを持つ可能性もあるため、以下言葉としてはToxicologyを用い、今後の法医学における展開につい述べたい。法医学は基礎医学というよりむしろ応用医学であるとされる。Toxicologyに発展により、ある薬毒物についての分析方法が研究開発され、また、どのような中毒症状が生じうるのかが明らかとなり、さらに、血液中における中毒あるいは致死濃度が判明すれば、それを法医学において応用することで、ある個体が、その薬毒物による中毒状態にあったことが診断できるようになる。実際に、法医学における中毒事例の鑑定では、Toxicologyから出された論文が参考文献とされることが多い。法医実務の発展のためには、Toxicologyの発展が必要である。一方で、危険ドラッグなど、新規に現れた薬毒物による未知の有害事象が発生した場合、法医学で経験された事例をToxicologyにフィードバックし、その薬毒物についての分析方法の開発、中毒によって生じる症状についての研究、中毒あるいは致死濃度の探求が必要となるであろう。海外においては、法医学で経験される解剖事例や生体鑑定事例について、薬毒物を分析する体制が整備されており、そのようなToxicologyへのフィードバックを行うことが可能で、それによる様々な研究が行われている。一方、日本では、薬毒物の分析体制は未整備であり、なかなかフィードバックがされていないのが現状である。Toxicologyの発展に供するような、法医学における薬毒物分析体制の整備が望まれると考えられる。

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