日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S31-2
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シンポジウム31: エピジェネティクス研究の新機軸〜モデル動物からヒトまで〜
魚類を用いたエピジェネティック記憶の研究
*武田 洋幸
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抄録

DNAに対するエピジェネティック修飾は、DNA配列の変化を伴わない環境刺激に対する細胞や個体の応答に関与していると考えられている。特に生物は、発生・成長段階において誘発されたエピジェネティック変化を記憶として、環境刺激がなくなった後も長期間保持する傾向がある。これらのメカニズムを調べるためにメダカを用いて、(1)メダカ初期発生におけるヒストン修飾のエピジェネティックリプログラミング、(2)メダカ幼魚および成体における初期栄養刺激後のエピジェネティック記憶の同定、の2つのシリーズの実験を実施している。 エピジェネティックリプログラミングについては、受精後のヒストン修飾パターンを、Spike-in ChIP-seq法を用いてゲノムワイドかつ定量的に解析した。初期胚リプログラミン中にヒストン修飾が広範囲に消去さることを確認したが、いくつかの修飾(H3K27ac、H3K27me3、H3K9me3)がリプログラミング中でも消去されず保持されていることを見出し、それらの役割を解析した。長期間のエピジェネティック記憶については、高脂肪食(HFD)を幼魚期に一過的与えて肝臓で誘発されるエピゲノムを長期間追跡した。HFDは、特に代謝遺伝子において、発現、chromatin accessibility、ヒストン修飾に劇的な変化を引き起こしたが、その後の長期のコントロール食投与により、その変化のほとんどが正常レベルに戻ることがわかった。しかし、ある種のゲノム遺伝子座(特に細胞シグナルに関連する遺伝子の周辺)で誘導されたエピジェネティック変化が長期間継続し、早期HFD食が肝臓の細胞状態を長期的に変化させていることが示唆された。

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