主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
魚類や爬虫類、および鳥類においては単為発生個体が産まれることが報告されているが、哺乳類の単為発生胚は胎盤形成不全により胎生致死になる。これは、単為発生胚では胎盤形成に必須な機能を持つ父性発現インプリンティング遺伝子の発現が欠如することが原因と考えられた。我々は、新規父性発現インプリンティング遺伝子Peg10の単離に成功し、Peg10の欠損マウスを作製することで、Peg10が哺乳類の初期胎盤形成に必須な機能を持つことを明らかにしている。Peg10は、2つのORFをコードし、それぞれがフグのSushi-ichiレトロトランスポゾンのGAGタンパクおよびPOLタンパクに高い相同性を持つレトロトランスポゾンに由来する遺伝子であることも明らかにしている。 Peg10レトロトランスポゾンは哺乳類の共通祖先においてゲノムに挿入し、哺乳類の進化の過程で胎盤形成に重要な機能を獲得するに至っている。しかしながら、レトロトランスポゾンは、レトロウィルスの持つエンベロープタンパクなどを欠損しており、別の細胞に感染し、レトロトランスポゾンのコピー数を増やすことはできない。 それ故、Peg10レトロトランスポゾンが、どのように哺乳類の共通祖先において、哺乳類ゲノムに入り込んできたのかは謎であった。最近になって、我々は、エクソソームを介した遺伝子水平伝搬機構が存在することを明らかにしている。さらに、Peg10タンパクが自身のmRNAに結合し、エクソソームに局在することが報告されていることから、哺乳類の共通祖先で起こった遺伝子水平伝搬について新たな仮説を紹介したい。