日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S32-3
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シンポジウム32: エクソソーム研究の最前線
エクソソームによる臨床革新を目指して
*吉岡 祐亮
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抄録

がん細胞と周囲の細胞間もしくは転移巣間における細胞外小胞(EVs)を介した細胞間コミュニケーションは、がんの転移に大きな影響を及ぼすことが知られている。われわれは、がん細胞が分泌するEVsが、がんの悪性化に寄与することを明らかにしており、EVsを介した細胞間コミュニケーションを断つことが、がんの新たな治療戦略の一つとなりうると考えた。したがって、われわれはEVsを標的とした新たながん治療戦略の開発として、卵巣がん細胞において、EVsの分泌を制御する低分子化合物を目指した。すでに、われわれは卵巣がんの腹膜播種転移に卵巣がん細胞由来EVsが関与していることを明らかにしており、低分子化合物ライブラリとわれわれが開発したエクソソーム定量法であるExoScreen法を組み合わせて、卵巣がん細胞のEV分泌を阻害する低分子化合物の探索を行なった。現在、同定したEV分泌阻害剤の作用点について、解析を行なっており、がん細胞におけるEV分泌のメカニズム解明も目指している。また、エクソソームがリキッドバイオプシーの幅を広げるリソースとして注目されており、以前より、われわれはエクソソームを利用したリキッドバイオプシーの開発を行なってきた。その成果の一つとして、膵臓がんにおけるバイオマーカーとしてGPRC5CとEPS8を同定した。これらタンパク質はステージIの患者においても、血清エクソソーム中に有意に多く含まれていた。さらに再発時の膵臓がん患者の血清エクソソームを解析した結果、再発時の血清においても、健常人の血清と比較して、有意に多く含まれていた。本講演では、エクソソームを利用した新規がん治療法や診断法が臨床現場へ与える影響やその可能性について言及する。

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