日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
セッションID: S32-4
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シンポジウム32: エクソソーム研究の最前線
間葉系幹細胞由来エクソソームによる肝硬変線維化改善を目指した研究開発
*阿部 寛幸武田 信峻水戸 將貴土屋 淳紀寺井 崇二
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抄録

【目的】肝硬変の線維化に関して、本来生体では線維化を改善させる機構があるが、病状の進行と共に弱くなる。我々は、間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cell:MSC)のエクソソーム(細胞外小胞)は線維化の改善に重要なマクロファージに作用して線維化改善効果を発揮すると考え、MSC由来のエクソソームの臨床応用を目指している。

【方法】MSC由来のエクソソームのin vitroでのマクロファージへの効果を検証し、治療効果も検討した。tdTomatoをエクソソーム表面蛋白に発現させるようにMSCを調整しin vitro, in vivoで動態を観察した。また、エクソームを大量に採取するために、通常用いる超遠心機を用いた採取と比較し、Tangential Flow Filtration(TFF)の手法を用いて採取し、マウス肝線維化モデルで線維化改善の評価を行った。

【結果】我々はこれまでにIFN-γで刺激した後のマクロファージが最も効果的にマクロファージを抗炎症性で運動能、貪食能を併せ持つ組織修復マクロファージへと誘導し、肝硬変モデルでも高い治療効果を発揮した。tdTomato導入エクソソームを用いた動態解析では、in vitroでマクロファージに最も取り込まれ、肝臓内でも障害部のマクロファージに集積していた。TFFを用いたエクソソームの採取では、超遠心法と比較し、回収量が3倍となり、回収時間が4分の1に減少し、肝線維化モデルでTFFで回収したエクソソームの治療効果は肝障害軽減効果、線維化改善効果に関して超遠心法と同等の効果が得られた。

【結論】MSC由来のエクソソームをマクロファージに作用させることにより、生体内での本来持つ線維化改善効果を誘導できる可能性がある結果と考えている。今後の臨床を目指した一連の研究を含めて現在までの状況を報告したい。

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