主催: 日本毒性学会
会議名: 第50回日本毒性学会学術年会
開催日: 2023/06/19 - 2023/06/21
臨床試験実施時の有効性と安全情報は限られており、特に早期臨床試験においてはヒトにおける情報は存在しないこともある。早期臨床試験におけるもっとも重要な関心事は安全性確保であるため、注目する非臨床試験データは毒性試験、安全性薬理試験である。毒性試験は小動物対象に行われることが多く、それらの結果に基づき安全性を予測してきた経験からイヌにおける安全性薬理試験や心臓安全性試験などの例外を除き、大動物のデータには馴染みのない担当医師がほとんどであろう。また、ヒトにおける薬物動態はげっ歯類等の小動物のみならず、大動物のデータからも予測は困難であることから大動物の必要性は感じられてはいない。しかし、昨年と今年の2回行った臨床試験受託事業協議会(JACIC)所属機関の試験担当医師を対象としたアンケート調査から、FIH試験を開始する際に注目する非臨床試験データとして、多くの医師が毒性試験に加えて薬効を証明する試験を挙げていた。薬理作用の検討は細胞のレセプターレベルからバイオマーカー、臨床効果に近い指標まで幅広く行われるが、医師がヒトでの効果発現予測に信頼性が高いと感じるのは臨床効果への外挿が期待できる生体の反応である。これらの反応を検出するためのモデル動物は適応疾患により異なる。一概に大動物のモデルがヒトでの薬効予測に有用であるわけでなく、適切なモデル選択とその根拠の説明を臨床試験に携わる医師としては求めたい。本講演ではここまで述べた内容に加え、前述のJACIC調査のアップデートを行い、臨床試験に関わる医師が非臨床試験に求めている事項について述べることとする。