日本毒性学会学術年会
第50回日本毒性学会学術年会
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フロンティアセミナー
AlphaFold2によるタンパク質立体構造予測を利用した毒性評価の試み
*武田 一貴
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抄録

毒性物質の毒性発現起点の多くは生体内高分子(タンパク質・核酸)への結合である。この評価手法にin vitro結合アッセイがあるが目的タンパク質を発現させる必要があり網羅性に欠ける。一方、このin silico評価手法にタンパク質立体構造情報を用いた分子ドッキングがある。タンパク質立体構造はX線結晶構造解析やクライオ電子顕微鏡で実験的に決定されProtein Data Bankで共有されている。しかし、この解析には大規模な設備が必要であり全タンパク質に対して構造解析済のタンパク質数ははるかに少ない。これに対しアミノ酸配列から既知構造を鋳型にタンパク質立体構造を予測するホモロジーモデリング手法(Swiss model等)が複数提案されアミノ酸配列のみで立体構造を予測できる簡便さが利点だが、高精度な予測には配列相同性の高い鋳型が必要な点が課題であった。しかし2021年にGoogle傘下のDeepMind社の開発したAlphaFold2によって状況が一変した。AlphaFold2は深層学習ベースの高精度なタンパク質立体構造予測アルゴリズムである。タンパク質立体構造予測コンテストCASP14で実験的観察に比肩する高スコアを獲得し話題となりUniProtに収載されている2億種のアミノ酸配列の立体構造を網羅的に予測しAlphaFold Data Baseとして公開した事で爆発的に利用が進んだ。また、タンパク質複合体についてもAlphaFold2で良好な相対位置が得られる事が発見されタンパク質間相互作用の解析への応用も進んでいる。一方で、AlphaFold2自体は低分子リガンドの結合性の評価機能はない事も公式から発表されている。本発表ではAlphaFold2をはじめとする2020年以降のタンパク質立体構造の高精度予測と既存の分子ドッキング等を組み合わせる事での毒性評価の可能性を議論したい。

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